プレ社長シリーズ

2015年7月17日

社長シリーズの元といわれているのが「三等重役」(正篇、続篇)です。

「三等重役」   1952年 東宝
「続・三等重役」 1952年 東宝

暖かい海沿いの町に(和歌山と思われます)にある企業、「南海産業」の人間をめぐるドラマです。原作は源氏鶏太、プロデュースが社長シリーズの藤本真澄(ふじもとさねずみ)、脚本がベテランの山本嘉次郎と後に成瀬映画の脚本を多く手がける井手俊郎。監督が春原政久、助監督が筧正典。筧は後に社長シリーズの監督を数作勤めます。尚、テレビのウルトラシリーズの監督も多く手がけています。

この映画において知っているべきなのが、「戦後派(アプレゲール)」という言葉です。アプレゲールは「戦後」という意味のフランス語です。戦後の混乱期や朝鮮特需で成り上がった者に対して、戦前からの実力者が使った言葉です。また、戦後に流行ったファッションを理解できない戦前派が彼ら(彼女ら)に向けて使った言葉でもあります。
もうひとつ知っておくべき言葉が「パージ(追放)」です。これはアメリカの政策に反対する人物(特に共産党)を公職や、経営者から追放する動きです。

「三等重役」では奈良前社長(小川虎之助)がパージにあい、戦後派の桑原社長(河村黎吉)と交代します。戦後派のお飾り、つまり社長とは名ばかりの三等重役という訳です。
しかし、パージの解けた奈良前社長を今度は病魔が襲い、桑原社長としては首をつなぎます。
このような、社長には『目の上のたんこぶ』的人物がいるという設定は後の社長シリーズにも引き継がれます。
他にも引き継がれる設定があるのですが長くなるので、軽くキャストの紹介をします。

社長役、河村黎吉(かわむられきち)。この人は戦前から松竹で活躍した渋い脇役で、カラーとして東野英治郎や志村喬に似ています。一見気難しいがお人好しで小心者の社長役を上手く演じています。この人が生きていればこの後の映画界も変わっていたかもしれません。それはこの人がどうのというより、森繁の社長シリーズが無かった可能性があるからです。でも所詮ifの話です。
社長夫人が沢村貞子、森繁が浦島人事課長。老獪な人事課長役です。その夫人が千石規子。
他には進藤英太郎、大泉滉あたりが有名でしょうか。

社長シリーズに繋がるキャストとしては、秘書課の社員が小林桂樹。小川虎之助の奈良社長の夫人が三好栄子。おこまという芸者役で藤間紫。東京営業所長の恋人役で越路吹雪が登場しています。

ところが、この作品がすなわち「社長シリーズ」の前作ではないのです。それはまた次回。

ちなみに、明日、明後日(もしかすると明々後日も)はライブ続きで休みます。

(Hatena::Diaryより転載)