「母べえ」 その2

いつもは行き当りばったりで映画を観るのですが、この作品は今月号の文藝春秋で、山田洋次、野上照代、吉永小百合の対談が載っていたので、予習をして観ることができました。母べえ(かあべえ)は、黒澤映画でスクリプター(記録係)を勤めた、野上照代さんの自伝です。この話を読んだ山田監督が是非映画に撮りたいと考え、吉永さんにオファーしたそうです。山田-吉永の作品はは、男はつらいよのマドンナ以来です。

はっきりいって悲しい話です。映画館で退出する時、近くにいた高校生ぐらいの女子が「後味悪いよねー」と話していました。母べえの家族には不幸ばかりが続きます。その不幸は戦争によってもたらされています。

父べえは文学者でありながら、反戦的な思想で国家反逆罪で逮捕されます。残されたのが母べえ、はつべえ(長女)、てるべえ(次女)の3人です。そこに父べえの妹で画家を目指す、ひさこ、父べえの教え子のやまちゃんが加わって父のない家庭を守ります。その間につかの間の楽しい時間も訪れます。

母べえの親戚の奈良のおじさんは、夏の間、居候します。彼は極めて金欲で、全体主義、翼賛の時代にやはり異分子であります。山田監督の映画は、全体的にはなんでもない日本の日常を描写しながら、その中にいる異端や異形、非日常がもたらすものをドラマとしてつくりあげていると思います。

「馬鹿がタンクでやってくる」も、「男はつらいよ」も、「幸せの黄色いハンカチ」もみんなそうでしょう。今回もとても良い作品だったと思います。

キャストは、父が坂東三津五郎、母が吉永小百合、はつが志田未来(みらい)、てるが佐藤未来(みく)、ひさこが檀れい、やまちゃんが浅野忠信、奈良のおじさんが笑福亭鶴瓶、という具合です。

「武士の一分」で好演した壇れい、坂東三津五郎が出演、山田組の新しいスタイルかもしれません。そうそう、山田組でもっとも重要な女優さんも特別出演でラストのシーンに出ていました。

追記:檀れいのボブカット、最高です。

(Hatena::Diaryより転載)

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