大正時代

「鼠」という小説を読みました、城山三郎のものです、彼らしく小説とノンフィクションの中間のような作品です。
舞台は大正時代の神戸。米騒動のおりの「鈴木商店」焼き討ち事件に焦点をあてています。この話って歴史で習ったような気がします。でも鈴木商店がどんな会社だったかは知りませんでした(なにしろ商店だから)経済を勉強した人は知っているのでしょうか。

鈴木商店はその名のとおりはじめは樟脳(防腐剤、薬品)や砂糖を扱う商店だったのですが、第一次世界大戦後の世界の相場を予測し大きな利益を上げ、その後国内外で活躍します。特に船舶の運用法や第三国貿易といったこれまでにない方法で成功します。
米騒動で本店や工場が焼き討ちをうけますがその後も発展し、一時は三井(物産)を抜いて日本一の売り上げをあげています(当時の金額で16億円)。
今も残る、日商岩井、神戸製鋼、石川島播磨重工、豊年精油、帝人などは鈴木商店が産み出した会社です。

しかし昭和に入り不景気の中、鈴木商店も資金繰りに行き詰まり、ついには政府と台湾銀行に見捨てられ倒産します。

大正時代っていうとどうも中途半端な時代というか、明治維新から日露戦争までの躍動期のあと停滞し、米騒動や大震災など暗い世相が顔を出しはじめ、昭和の初期には日本は行ってはいけない道に進んでしまった。そんな流れをもってしまいます。(これも司馬遼太郎が悪い)

ところが大正時代というのは経済は拡大し、産業も特に重工業が活発になり、政治も多様化し(大正デモクラシー、普通選挙、水平社の運動、共産主義の発生など)、文学なども盛んになりました(これは書くまでもないですね)。もっと見なおしていいと思うのです。

鈴木商店には、番頭あがりで専務、そして最高権力者の金子、番頭の先輩の柳田、初期に入社して社内のバランサーだった西川などの重鎮がいました。ところが会社が大きくなるにつれ学卒を多く取り、高商派(今の神戸経済大や一橋大などの出身者)が増えます。
商店あがりの重役は、若い学卒達に比較的自由な裁量を与え仕事を任せていたようです。そしてそれぞれが大きな利益をあげる。物産などどは違う社風だったのでしょう。

読んでいて、オウムやライブドアに通じる雰囲気を感じました。今とは法律も倫理観も違うのですが、若者のエネルギーをある方向に集中させると大きなパワーを生じます。それがつぶされちゃうとかどうかは大人の論理です。老練されるとそのパワーより世のバランスの中で振る舞うことが重要になるのです。

残念ながらこの小説は映画化されていません。東京映画でつくっていたら良かったのに。

(Hatena::Diaryより転載)

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